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第60話 王太子、旧貴族派を裁く

last update publish date: 2026-10-06 14:08:08

 王太子アーヴィンは、長く「穏やかな後継者」と呼ばれていた。

 それは褒め言葉でもあり、侮りでもあった。

 穏やか。

 慎重。

 聞き分けがよい。

 王国の均衡を重んじる。

 若いが、古い貴族にも礼を尽くす。

 そういう言葉で、彼は包まれていた。

 包まれていた、というより、縛られていたのかもしれない。

 王太子だから怒鳴ってはならない。

 王太子だから急ぎすぎてはならない。

 王太子だから古い貴族を立てなければならない。

 王太子だから、弟の失敗も王家の恥として飲み込まなければならない。

 リディアは、そのことに最近ようやく気づいた。

 自分が「強い長女」として扱われていたように、アーヴィンもまた「穏やかな王太子」という席へ座らされていたのだ。

 本人が望んだ部分もあっただろう。

 王国のため、王家のため、民のため
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